研究概要 |
部位特異的変異と速度論的解析を実施して、小胞体Ca^<2+>ポンプリン酸化中間体の構造異性化により会合したActuatorドメインとPhosphorylationドメインは、二つの領域(Val^<200> loop, Tyr^<122>-hydrophpbic cluster)において強いドメイン間相互作用を生じることにより、輸送部位から内腔へCa^<2+>を放出させ、アシルリン酸加水分解能を持つE2P触媒部位を形成することを明らかにした。そしてこれらのステップにおける構造変化には、Actuatorドメインと第1膜貫通ヘリックスを繋ぐリンカーが必須の機能を担うことを明らかにした。この成果によりCa^<2+>輸送におけるエネルギー共役の本質的仕組みを明らかにした。 メタルフッ素化合物を用いて小胞体Ca^<2+>ポンプ各リン酸化中間体の安定な構造アナログを開発した。そしてE2・BeF_x, E2・AlF_4^-,およびE2・MgF_4^<2->は、それぞれCa^<2+>を放出したリン酸化中間体E2Pの基底状態、加水分解遷移状態、および生成物複合体(E2・Pi)の構造アナログであることを示した。またE2P加水分解に伴ってCa^<2+>放出ゲートが閉じ、内腔Ca^<2+>の漏れ出しを防ぐ構造が獲得されることを明らかにした。さらに、輸送部位内にCa^<2+>を閉塞したE1PCa_2の構造アナログを開発した。これらの成果は、Ca^<2+>ポンプの各中間体結晶構造解析に必須の貢献をしている。 2b型小胞体Ca^<2+>ポンプの遺伝的異常によって生じるダリエー病(皮膚角化細胞の異常分化)51家系51種の遺伝子異常について、各々の変異に依存しておこるCa^<2+>ポンプ蛋白の異常の内容を明らかにし発症機序理解に貢献した。結果はまた、Ca^<2+>ポンプの構造と機能を理解するための重要な情報を与えた。 ゴルジ装置Ca^<2+>/Mn^<2+>ポンプは表皮基底層に発現・局在すること、このポンプは角化細胞を基底層に未分化状態で保ち、このポンプの発現抑制が角化細胞分化(すなわち角化して基底層から遊離)させることを明らかにした。これにより皮膚表皮角化の理解に全く新しい側面を切り開いた。
|