研究課題
基盤研究(B)
本研究では、ダイニンと微小管との相互作用に注目して、分子レベルでの挙動を計測することにより、その分子マシナリーの一端を明らかにした。ダイニン分子が微小管上を運動する際にプロトフィラメント1本で運動ができるのか、複数頭部を複数のプロトフィラメントにまたがって相互作用することにより運動しているのかを明らかにするために、ダイニンの結合領域であるβチューブリンのヘリックス12付近がただ1列に表面に露出した重合体であるZnシートを用いた。以前にガラスに固定したダイニンがこのZnシートを滑り運動させることを観察したが、この運動再構成系では1本のZnシートに同時に複数のダイニン分子が相互作用できるので、必ずしも1分子ダイニンが1本のプロトフィラメントを利用しているとは限らない。そこで酵母ダイニンのN末端にGFPを融合させた双頭の組換え体を用いて固定したZnシートの一端を使って運動を観察したところ、連続的な運動が観察できた。これは、ダイニンの複数の頭部が1本のプロトフィラメントと交互に相互作用することを示している。これまでのダイニンの力学計測に使用してきたダイニンビーズは、ダイニンの吸着を制御することができなかったが、組換え体を利用することにより、N末側にビオチン化タグを入れ、その部位でアビジンコートビーズに特異的に固定した。この単頭ダイニンのビーズを用いて微小管の破断力を測定したところ、ヌクレオチド無しとAMPPNP存在下では外部負荷の方向による破断力の違いはないが、ADP・ViとADP存在下では進行方向への破断力が逆方向への破断力の約半分であった。これは、双頭ダイニンが微小管上を進むとき、後ろの頭部のほうが外れやすいことを意味し、運動連続性を上げることに寄与すると考えられる。これらの成果は、ダイニンの高次機能についての新たな知見を与え、今後の運動発生メカニズムの解明への指針を与えるものである。
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http://bio.c.u-tokyo.ac.jp/labs/toyoshim/