本研究では、光学顕微鏡によるイメージング技術を利用し、「生体分子個々の結合・解離の速度などの動的な情報」を網羅的に解析できる新しい分子間相互作用解析システムの開発を行ってきた。生体分子を結合させたマイクロビーズをガラス基板上にアレイ化する技術と全反射蛍光顕微鏡を組み合わせ、生体分子間相互作用を高感度に解析できる顕微鏡システムを構築し、微量な試料で複数の生体分子間の結合・解離過程を同時に実時間で解析することを示した。光ピンセットと光反応性架橋剤を使って作製するマイクロビーズアレイは、一般的な動物細胞と同等のサイズ内に複数の抗体や核酸をアレイ化することができ、分子を検出する領域を1細胞サイズ程度に狭めることが可能である。本年度は、PDMSマイクロチャンバー内で細胞を培養し、1細胞から分泌されるタンパク質の検出を行った。 まず、多数の凹(40×40×20μm^3)のあるPDMSマイクロチャンバーチップ上に細胞をまき、凹部に細胞を収めた後(図1A)、カバーガラスを載せ、約30pLの微小空間に細胞を培養液と共に閉じこめた。分泌シグナルを付加した緑色蛍光タンパク質(分泌EGFP)を発現している細胞をこの方法で培養すると、分泌EGFPが細胞外に分泌されチャンバー内にEGFPの蛍光シグナルが時間と共に増加していく様子が観察された。次に同様の方法で分泌シグナルを付加したFLAGタグ融合Glutathione S-transferase(分泌FLAG-GST)を発現する細胞1個を、抗GST抗体結合マイクロビーズアレイとともに培養した。培養後、Cy3標識抗FLAG抗体でサンドイッチ検出を行うと、ビーズに蛍光シグナルが得られ、1個の細胞から分泌されるタンパク質を検出することができることが示された。
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