昨年度までに、マイクロビーズアレイと全反射照明蛍光顕微鏡を組み合わせた高感度生体分子間相互作用観察システムとPDMS製マイクロチャンバーを用いた1細胞の捕捉・溶解技術を使って、1個の細胞中に存在するタンパク質の検出や1細胞中の酵素活性を計測する技術を完成させた。本年度は、PDMSマイクロチャンバー内で細胞を培養し、1細胞から分泌されるタンパク質の検出・計測技術について開発をおこなった。モデル系として1個のマウスハイブリドーマが産生する抗体の検出を試みた。多数の凹(40×40×20μm^3)の空いたPDMSマイクロチャンバーチップ上にマウスハイブリドーマを播き、凹部に細胞を収めた後、プローブ抗体を固定化したカバーガラスと合わせ、約30pLの微小空間に細胞を閉じこめた。検出用抗原を含む培養液を流し込み、そのままの状態で培養を行い、10〜20分後に蛍光像を観察した。マイクロビーズによる産生抗体の検出法、量子ドットカウント法による産生抗体の検出法のいずれも産生された抗体を検出することができた。個々の細胞の産生能を計測してみると、異なる産生能を持つ細胞が存在していることが明らかとなった。また、培地添加と同時に蛍光像を観察すると、時間とともに抗体濃度が上昇していく様子をとらえることができた。以上のようにPDMSマイクロウェルアレイ、マイクロビーズアレイ技術、量子ドットカウント法および全反射照明を組み込んだ高感蛍光検出顕微鏡を組み合わせることで、1細胞から分泌されるタンパク質の検出・定量化への応用が可能になった。今後は、1細胞レベルでの分泌サイトカイン等の検出方法や多色蛍光色素を用いての多重解析技術について検討していく予定である。
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