研究概要 |
An and Mogami(199X)がショウジョウバエ間接飛翔筋で同定した10個の強い優性変異アクチンを、われわれのアクチンチモシン融合蛋白質発現系を用いて順次調製し、機能解析を進めている。18年度は、G63D,R95C,G156D,G156S,およびG268Dを調製した。 その結果、G63D,R95C,G156D,およびG156Sは重合活性に問題があった。G156S/Dは、ATP結合ループに位置し、加水分解またはリン酸解離速度に問題がある可能性がある。G268Dは、いわゆるる疎水性プラグ領域にあり、同領域の柔軟性が損なわれ、かつ荷電残基が挿入されたことと関連があると思われる。ただし、こうした重合能の欠陥が、飛翔能の阻害につながるのかは不明である。 一方、R95Cは正常な重合能を示し、骨格筋ミオシンを用いたin vitro運動活性も正常であった。ただし、トロポミオシン結合およびトロポニン・トロポミオシン存在下のATP分解活性に問題があることが明らかとなった(帝京大学・若林健之教授との共同研究)。今後は、正常アクチンとの共重合フィラメントの解析も含めて、優性な機能欠陥の機構を解明していく。 グリシンスキャニングに関しては、G74V,G74AおよびG164Vを調製した。G74Vはキモトリプシン感受性が顕著に増大し、構造への大きな影響が推察されたが、精製が困難となり、別途精製法を検討中である。一方、G74Aには顕著な効果は見られなかった。G146Vの重合能は正常であったが、ミオシン運動能がほぼ完全に失われた。ただし、正常アクチンの運動能を優性には阻害しなかった。今後、構造解析を行っていく予定である。
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