われわれは、アクチンフィラメントの構造機能連関、とくにミオシンとの相互作用におけるアクチン側の構造変化の解明を目指し、本研究を進めている。そのため、前年度までに変異組換えアクチンの効率的な新奇発現系の開発したが、今年度は、この新奇発現系と、それを用いて発現したふたつの酵母優性致死変異アクチンに関する解析結果をまとめ、論文発表を行った。 またこれと平行して、同発現系を用いて発現した10個のショウジョウバエ優性変異アクチンの解析も進めた。その結果、重合に欠陥があるもの、トロポミオシンとの相互作用に欠陥があるものが同定さ、それらのデータをまとめた論文の準備に着手した。しかし一部の変異は、われわれの新規発現系をもってしても十分量発現することができず、それらについては解析できない状態となっている。この間題は、他の発現系(たとえば昆虫細胞系)を使えば解決できる可能性があり、次年度の課題としたい。 一方、アクチンの構造変化には、分子内のグリシン残基が重要な働きをしている可能性が高いので、全てのグリシン残基を個別にあるいは適宜クラスター化して体系的に変異させていくグリシンスキャニング変異実験にも着手した。その結果、G146V変異は重合能を持つにも拘わらず、in vitroでのミオシンIIとの相互作用における運動性をほとんど持たないことが明らかとなった。この変異アクチンは、運動性に直接欠陥を持つ初めての変異であり、さらに詳細に解析していきたい。
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