研究概要 |
最上ら(1996)は、ショウジョウバエの遺伝学的解析から、10個の優性阻害型の変異を同定した。これらの変異においては、少数の変異アクチンがフィラメントに取り込まれることにより全体の機能が阻害された可能性があるので、その詳細なin vitro機能解析は、サブユニット間の協調的相互作用とその生理的機能の解明に資すると期待される。しかしハエから十分量の変異アクチンを精製することは困難なので、われわれの効率的組換えアクチン発現系を利用する。 昨年度から、5個の変異アクチンを発現精製し、生化学的解析を行っている。今年度は、トロポニン・トロポミオシン存在下のE226K変異アクチンフィラメントは、Ca^<2+>存在下でも全く活性化されないことを見いだした。昨年度のデータと併せて論文の準備中である。 これと平行して、アクチン内のグリシンを順次Valに置換したsite-directed変異シリーズ(グリシンスキャニング)作成を進め、作成が終わった17変異アクチンのうち5変異(G13/15V,G36V,G74V,G146V,G156/158V)は、酵母の増殖を優性に阻害していた。このうちG146V変異アクチンは、重合能は正常で、骨格筋ミオシン(class II)と結合し、ATPaseを活性化できるにもかかわらず、運動性は大きく低下していた。発生する力も1/3に低下していた(阪大柳田グループとの共同研究)。しかしclass V myosinとの相互作用においては、運動速度、力ともに野生型と全く同等であった。Class IIとV myosinは運動性が質的に異なる(前者は高速non-processive、後者は低速processive)ので、G146が関与するアクチンフィラメントの構造変化が、高速non-processiveに重要な機能を果たしていると示唆された。
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