本年度は(1)新たな顕微鏡下でのRNA検出法の開発と、(2)新規tRNA結合因子の探索を中心に解析を進めた。 1新たなRNAの検出法の開発では、オリゴヌクレオチドとのハイブリダイズとDNA polymeraseによる3'-末端伸長を利用し、3'-末端配列特異的にRNAを検出する方法(Oligonucleotide-dirccted 3'-terminal extension of RNA法)を確立した。この方法は、RNAの3'末端の数塩基の違いを識別して特定のRNAを検出することができ、この手法を用いてtRNAの3'末端部のCCA配列が短縮化する変異であるcca1-1変異株中で、CCA配列の欠落したtRNAが特異的に核内に蓄積し、正常な配列を持ったtRNAは細胞質に留まることを明らかにした。他方、malachite green結合性aptamerを用いた蛍光RNAタグによる特異的なRNAの検出に関しても検討を行い、タグ配列を含むRNAがゲル上で特異的にmalachite greenを結合して蛍光を発することを確認した。現在、これがtRNAのイントロン部分に導入可能かに関して検討を加えている。 2新規tRNA結合因子の探索に置いては、まず、野生型の酵母より調製した全tRNAを固相に固定化し、これに結合するタンパク質群の同定を行った。tRNAへの結合が既知であるcEF1Aやenolaseなどのタンパク質に加え、Hsp70の一種であるSsa2pが固定化tRNAレジンに結合することがわかった。この結合はATP感受性であり、Hsp70ファミリー中、近縁であるSsa1pはあまりtRNAレジンに結合しないことから、Ssa2pが直接もしくはこれに結合した何らかの因子を介してtRNAを認識していることが明らかとなった。さらに、Δssa1株、Δssa2株でtRNAの細胞内挙動を観察したところ、Δssa2株では特異的にtRNAの栄養枯渇時の核内輸送亢進が見られないことが明らかとなった。現在、Ssa2pがどのような因子を介してtRNAを結合しているのかに関して検討を進めている。
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