AAAタンパク質の共通のエンジンであるAAA ATPaseの作動原理、すなわちATP加水分解機構、基質タンパク質への作用機構の解明に取り組んだ。AAAプロテアーゼFtsHの変異体の解析から、ATPaseリングの孔に位置する酸性残基の重要性や基質特異性に関わる残基を明らかにし、FtsHがポリペプチド鎖の内部から分解を開始できることを明らかにした。アンフォールディング活性の上昇したFtsHをスクリーニングする系を構築した。また、FtsHと線虫のホモログとのキメラタンパク質の解析から、基質ポリペプチドの分解がATPの結合だけで起こるという結果を得た。これは、ATPの加水分解非依存的トランスロケーションの可能性を示唆する知見である。線虫のfidgetinホモログの解析から、ATP加水分解の「分子間触媒モデル」とサブユニット間の協調性に関する知見を得た。線虫のp97についてin vitroで、タンパク質の凝集体形成を抑制するシャペロン活性を認めた。脱凝集活性についても検討している。線虫のspastinホモログSPAS-1およびヒトkataninについて微小管への作用を解析した。SPAS-1については、培養細胞で強制発現することにより、微小管の消失を観察した。Walkerモチーフの変異体やATPaseリングの孔の保存された芳香族残基の変異体の強制発現では微小管の消失が認められず、SPAS-1の活性にATPaseやボアの重要性が示された。Kataninについては蛍光顕微鏡下で微小管の切断を観察し、変異体を用いた解析に着手するとともに、高速原子間力顕微鏡による観察条件を検討している。SPAS-1についても精製タンパク質を用いて微小管の切断を確認中である。
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