研究概要 |
TATAボックス/イニシエーター等のコアプロモーター構造を認識する基本転写因子TFIIDは、転写開始前複合体のアッセンブリーに際して核となる分子であり、転写調節因子から受け取った信号を転写量の増減へと変換する上で中心的な役割を果たす。出芽酵母には138個のリボソームタンパク質(RP)遺伝子が存在し(mRNA全体の約50%に相当)、これらは全てTFIID依存的に転写されると考えられている。またRP遺伝子は、TOR経路によって活性調節を受ける転写調節因子FHL1-IFH1複合体及びRAP1,SFP1等によって協調的に制御されることが知られている(富栄養時はON,貧栄養時はOFF)が、その詳細については明らかにされていない。 今年度はRP遺伝子群(RPS, RPL)を統合的に制御する転写因子としてHMGBタンパク質の一つであるHMO1を新たに同定し、遺伝学的な解析からHMO1とTFIID, TFIIA, TFIIBとの相関を示すとともに、タイリングアレイを用いてHMO1,RAP1,FHL1,SFP1の標的遺伝子群を網羅的に同定し、相互の詳細な比較検討を行った。 さらにこれらの転写因子群の転写活性化シグナルをTFIIDがどのように解読しているかを明らかにするために、RPS5遺伝子のコアプロモーター上に存在すると考えられるTFIID)認識エレメントの同定を試みた。その結果、興味深いことに、RPS5コアプロモーターの転写開始点は上流配列とイニシエーター配列の各々に依存する二重の制御システムによって決定されている可能性が示唆された。今後は両者を物理的に分離した上で、さらに詳しい解析を行う予定である。
|