ユビキチン・プロテアソーム系を介したタンパク質分解は、多岐にわたる生命現象に重要な働きを果たしていることが明らかになっている。そして現在までの精力的な研究により生体内に非常に多くのE3が存在し、基質特異性を決める役割を果たしていることが明らかになっている。なかでもCullin型E3が重要な役割を担っていることが予想されているが、技術的困難さのため、酵素-基質の対応関係が明らかになっているのはごく僅かである。近年質量分析法の技術進歩およびEST計画の進行によるデータベースの充実により微量タンパク質の同定が可能になってきている。そこで本研究では、Cullin型E3中でもCul2およびCul5型E3に対する基質を、免疫沈降法および質量分析法の組み合わせにより分離・同定し、さらにはこれら酵素・基質関係により制御される生命現象を解明することを目的として研究を進めている。その結果としてCul2型E3であるFEM1B複合体の基質としてM期のリン酸化酵素であるNEK2を同定した。FEM1BとNEK2が結合すること、FEM1B複合体によりNEK2が試験管内でユビキチン化されること、FEM1Bの発現制御によりNEK2の発現量が変化することなどを確認しており、さらなる解析を進めている最中である。
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