研究概要 |
1)ヒト大腸癌由来上皮細胞株T84よりcDNAを調製し、cDNA配列がコードするタンパク質をGFPとの融合タンパク質として発現させることができるレトロウイルスcDNAライブラリーを作製した。これを用いて、上皮細胞間接着構造に濃縮する遺伝子産物のスクリーニングを行った。その結果、20-3,CAR, angiomotin、caludinといったタイトジャンクションの既知タンパク質がクローニングされ、実験系がうまく動くことを確認した。このスクリーニングにおいて、タイトジャンクションと深い関わりがある3細胞結合(tricellular junction)に濃縮する新規の膜タンパク質をクローニングすることに成功した。3細胞結合に濃縮するタンパク質としてはこれまでにtricellularしか報告されておらず、今回得られた新規膜タンパク質は3細胞結合の形成機構と機能を研究する上できわめて興味がもたれる。その機能解析を目指して現在抗体作製を進めている。新たなスクリーングも続行している。 2)平成15-16年度研究において、本研究と同様の方法で得られた2種のタンパク質ARHGAP12とSPAL3について解析を進めた。いずれもその構造から低分子量Gタンパク質のGAPタンパク質と考えられ、細胞間接着構造に濃縮するという意味では今回新規に同定されたものである。そこで、ARHGAP12とSPAL3に対する特異抗体を作製し、様々な組織においてこれらのタンパク質が上皮細胞間接着部位のアドヘレンスジャンクションに局在することを蛍光抗体法により明らかにした。細胞間接着部位における何らかのシグナル伝達に関与することが予想され、その観点から機能解析を続行している。
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