研究概要 |
平成18年度までに本プロジェクトで同定されたアドヘレンスジャンクションの新規分子SPAL3と3細胞結合(tricellular junction)の新規構成分子(ここでは暫定的にTRCXとよぶ)について機能解析を行った。 1,SPAL3:最新のデータベース情報より前年度までに得ていたSPAL3のcDNAが部分長であることが判明し、その全長cDNAを取得した。全長SPAL3を線維芽細胞に強制発現させると細胞が突起を出して伸長し、また上皮細胞に強制発現させると、カルシウムスイッチアッセイにおいて、アドヘレンスジャンクション形成遅延がみられた。以上の結果から、SPAL3がアドヘレンスジャンクション形成の制御のシグナル伝達に関わる分子であることが示された。 2,TRCX:TRCXを詔識するモノクローナル抗体を作製し、TRCXが培養上皮細胞やマウスの様々な上皮組織において内在性に発現し、かつ3細胞結合に濃縮することを確認した。欠失変異体を用いた実験から、TRCXの細胞質領域に3細胞結合への濃縮活性が存在することを明らかにした。また、RNAiにより、TRCXの発現抑制させたマウス上皮細胞を樹立することに成功した。この細胞におけるタイトジャンクションマーカーを用いた蛍光抗体法と細胞シートの電気抵抗値測定から、TRCXは3細胞結合の形態に大きな影響は与えないものの上皮バリア機能に関与することを明らかにした。TRCXの同定は、タイトジャンクション研究の新しい方向として最近開拓された3細胞結合の分子的理解を大きく進めるものであり、今後の発展が大いに期待できる。
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