研究概要 |
本研究では、ヒト培養細胞を用いて細胞核構築における核膜とクロマチンの相互作用の関係を分子レベルで探るきっかけを得ることを目的とし、核膜の最も顕著な構造体である核膜孔複合体の機能と動態を解析を進めた。その結果、細胞核構築を考える上で重要と思われる下記の新しい知見を得ることができた。1)全てのヒト培養細胞に共通する現象として、細胞周期に依存して核膜孔複合体が規則的にその分布と数を変えること、また、その変化がラミンを中心とする核内膜タンパク質によって引き起こされることを見つけた(Maeshima et al., 2006)。この結果を得て、複数の核膜孔複合体構成因子並びに、核内膜タンパク質を同時発現する安定発現株を取得することで(Yahata et al., J. Mol. Biol., 2007)、間期核における核膜孔複合体の形成過程とダイナミクスを可視化することに成功した。この発現系を利用して、膜タンパク質POM121の核膜孔複合体形成の重要性を示し(Funakoshi et al., FEBS Let, 2007)、間期核膜上に新たに形成される核膜孔複合体を検出する解析系を樹立することができた。現在、核膜孔形成が細胞周期シグナルによって厳密にコントロールされていることがわかり、その前駆体構造を捉えている(投稿準備中)。2)核膜孔複合体を介して、importin α/β輸送経路で核の中に運搬されるクロモクネシンKidが、importin α、importin β、並びに分裂期染色体から生成されるRanGTPの作用で、染色体上にローディングされることを示した(Tahara et al., JCB, 2008)。これは、核-細胞質間輸送を担う因子が、核膜のない細胞分裂期において染色体構築と機能に寄与することを示した最初の現象である。
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