本課題ではオートファジーによる細胞内分解がどのように制御されるかについて、特に内分泌系に注目して解析を行うことを目的としている。昨年度、栄養飢餓時における各臓器でのmTOR活性とオートファジー活性の相関について解析したため、今年度は糖尿病モデルおよびインスリンシグナル変異マウスを用いて、オートファジー制御におけるインスリン系の関与について解析を行った。その結果、ストレプトゾシン誘導性I型糖尿病モデルでは摂食時においてもオートファジーが誘導されることが観察され、それは心筋、骨格筋、肝で特に著明であった。また、この効果はインスリンと糖の投与について一部抑制可能であった。しかし、これらのマウスにおいても、絶食によってさらにオートファジーが誘導されるため、インスリン以外の因子の関与が示唆指された。そこで、オートファジー制御におけるインスリンシグナル系の生理的意義をさらに明らかにするため、骨格筋特異的インスリン受容体ノックアウトマウスを用いた。しかし、このマウスにおいては、オートファジーの基底レベルおよび飢餓誘導レベルともにこれまでのところ野生型と顕著な差が見られなかった。以上の実験より、オートファジー制御はインスリン単独と言うより、より複雑な内分泌制御をうけていると考えられた。一方、オートファジーの直接の制御因子として本年度新規にFIP200というULK1結合因子を同定した。この因子はアミノ酸飢餓によって誘導されるオートファジー、および増殖因子の飢餓によって誘導されるオートファジーのいずれにも必要であることが判明した。この因子のさらなる上流を調べることによって、オートファジーの制御機構がより明らかにされることが期待される。
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