研究概要 |
メダカ変異体スクリーニングの過程で得られた左右軸形成に異常のある変異体ついて、すでに原因遺伝子が判明している2系統(ut016(ktu)とabc)については原因遺伝子の機能解析と表現型との関連の解析、原因遺伝子が判明していない3系統についてはポジショナルクローニングを実施した。 1.既に特定していた2系統の変異体(ktu,abc)の原因遺伝子は、はいずれも機能未知の遺伝子であった。特にktu変異体の原因遺伝子は全く新規のタンパク質で、繊毛の運動性獲得に必須であった。透過型および走査型電子顕微鏡を用いた解析により、ktu変異体では軸糸のダイニン内腕および外腕が欠失しているかその数が著しく減少していることを見いだした。Ktuの特異抗体を作成してその細胞内局在を調べた結果、Ktuは軸糸には存在せず、細胞質中に存在し、ダイニンアーム形成に関与する新しい役割を持ったタンパク質であることが判明した。最近、繊毛病(primary ciliary dyskinesia)の家系で、ヒトKTUが変異を起こしている2家系を特定した(H.Omran博士(Freiburug大)との共同研究)。さらにTOF-MASS解析により、KtuはHsp70と結合するco-chaperoneであることも判明した(現在論文投稿中)。一方、abcに関しては、構造からイオンチャネルと関連するタンパク質であることが判明している。Caイオンとの関係を調べている 2.aA90の原因遺伝子のクローニング:原因遺伝子が未知であった変異体のうち、aA90のポジショナルクローニングに成功した。その結果、aA90は細胞質ダイニンをコードしていることが判明した。現在母性効果を除いたaA90変異体において、鞭毛・繊毛形成の異常を詳細に調べている。
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