研究概要 |
脊椎動物を特徴づける現象のひとつに、からだの前後軸に沿って繰り返し配置される構造がある。この繰り返し構造は、体節とよばれる中胚葉組織によって構成される。体節は、主に骨格筋や中軸骨格を形成する前駆体であるが、一方で、体節内のある細胞集団は、背側大動脈などの血管形成にも寄与することが知られている。これまでの研究から、体節細胞による背側大動脈の形成過程において、まず体節細胞がNotch活性化を介して、すでに形成されている原始背側大動脈方向に積極的に誘引され、次に移動してきたこれらの体節細胞が背側大動脈全体の内皮細胞を構成するようになることなどを見出してきた。H20年度においては、これらの発見をまとめて学術誌「Developlnental Cell」に発表するとともに、記者発表による全国紙報道をとおして、広く社会に発信した(平成20年6月16日付け日本経済新聞など)。 加えてH20年度においては、体節の分節化のしくみにっいても研究を行った。体節は初期発生過程において、未分節中胚葉組織の前方から一対ずつくびれ切れることにより形成される。我々はこれまでに、このくびれ切れ(境界形成)の現象が、ある一部の細胞同士の相互作用によって引き起こされることを見出している(Development,2002)。本年度は、これらの細胞間相互作用の実体がEph/Ephrinシグナルであること、またEphrinシグナルの下流ではCdc42の活性が抑制されることなどを見出した。本研究により、体節の分節形成、そしてそれに続く体節からの動脈形成という、一連の形態形成を制御する分子カスケードの一端を解明することができた。
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