研究概要 |
本研究は、脊索動物の特徴的な発生様式を支える発生遺伝子の機能、発現制御機構を解析することによって、脊索動物の基本的な遺伝子プログラムとその変化を理解することを目的としている。今年度は下記の結果を得た。 1)カタユウレイボヤのLhx3遺伝子Ci-Lhx3は,マボヤのLhx3遺伝子(Hrlim)と同様に時期特異的な2種類の転写物を持つが,それぞれの転写調節を制御する領域は,それぞれの5'エクソンの上流域にあることを明らかにした。 2)カタユウレイボヤの中枢神経系においては従来、前後軸に沿ってOtx, Pax2/5/8, Hoxが発現することがtripartite organizationとして知られ、最近ではショウジョウバエにおいても保存されていると考えられている。我々はカタユウレイボヤ初期から中期尾芽胚期における、上記遺伝子を含めた7つの重要な発生遺伝子について発現ドメイン相互の関係を詳細に調べた。その結果、これらの遺伝子の発現発生とともに極めてダイナミックに変化することが分かった。tripartite organizationについては再考の余地があると思われる(投稿準備中)。 3)脊索動物のボディプランの特徴の一つである尾には、シュペーマンオーガナイザーの派生物である尾芽がある。ホヤの発生においては、オタマジャクシ型の幼生が形成されるが、その尾の後端には未分化細胞は存在せず、尾芽はないと理解されている。今年度、我々は始原的な「尾芽遺伝子ネットワーク」がホヤに残存する可能性の検討を開始した。尾の後端マーカーの発現には、先行して植物極からのシグナルが必要であり、脊椎動物と同様に尾の先端の形成やパターン化にFGFシグナルが関わっていることを明らかにした(論文発表in press)。
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