研究課題
本研究の目的は、ホヤの発生遺伝子の機能、発現制御機構を解析することにより、脊索動物の基本的な発生戦略とその変化を理解していくことである。本年度は以下のような成果を得た。1)カタユウレイボヤのHox遺伝子の機能解析とカタユウレイボヤ以外の尾索動物、半索動物のHox遺伝子の構造解析:カタユウレイボヤの初期発生におけるHox遺伝子の機能の全貌を、ノックダウン実験により、明らかにした。結果はHox遺伝子機能の既知事例に比べ、ずっとmodestなものであった(論文投稿中)。またマボヤ、オオサルパ、ギボシムシ、ウミシダのHox遺伝子メンバーの構成についても新規情報を得た(論文投稿準備中)。これらの情報は脊索動物の成立を考える上で有用な情報となる筈である。2)左右関連遺伝子:本年度は、カタユウレイボヤのPitx遺伝子が尾芽胚期に示す左側特異的な遺伝子発現について、その転写調節の概要を明らかにした。すなわちPitx遺伝子のイントロン中に左側表皮特異的エンハンサーがあること、その中にはFoxH1転写因子結合部位があり、この部位に変異を導入する、あるいはFoxH1をノックダウンするとPitxの左側特異的発現が失われること等を示した。ホヤと脊椎動物で左側特異的な遺伝子発現カスケードが極めてよく保存されていることが分かった。脊索動物に共通する発生戦略の候補と考えられる。3)ホヤ幼生の中枢神経系におけるOtx遺伝子の転写制御機構:ホヤの発生では、Otx遺伝子は卵割期から中枢神経系の細胞系列で発現する。今回中枢神経系での発現に必要な領域を絞り込むことができた。卵割期での転写調節機構については既に明らかにされているが、これとは異なった機構に拠っているようである。現在、さらに検討を進めている。
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http://dept.biol.metro-u.ac.jp/labo.asp?ID=devpro