研究課題
多細胞生物の分化制御過程において細胞増殖と分化の制御が重要であると考えられている。この内、G1期における細胞周期の制御は、癌化や幹細胞の分化にも関わる重要な問題を含んでいる。これまでの研究から、転写コリプレッサー複合体の一つであるebiがG1期の抑制に関わることを突き止めた。本研究課題はebiによるG1期抑制の分子メカニズムの解明を目的として研究を行った。研究成果(1)EbiによるE2Fの発現制御ebiの変異体ではE2FおよびG1抑制因子(rbf,p21,rux)の発現が減少していることが確かめられた。このメカニズムとしてはEbiがポリコーム群の機能に拮抗している結果であることを突き止めている(投稿準備中)。(2)EbiによるE2F標的遺伝子発現の抑制これまでの研究からEbiは転写コリプレッサーとして機能していることを見つけている(Tsuda et al.,EMBO J.)。そこで、生化学的な解析を行った結果、EbiはRBFと複合体を形成していることが確かめられた。この結果から、ebiはE2Fの標的遺伝子発現を抑制していることが予想され、real-time PCRにより解析を行ったところ、CG3105がebiの変異で発現上昇していることが確認された。(3)EbiによるE2Fの安定性制御これまでにE2FはG1期で安定性が制御されていることが明らかになっていた。そこで、EbiによるE2Fの安定性を検討した結果、Ebiの発現上昇に伴い、E2Fの安定性が減少することが確かめられた。詳しい解析の結果、EbiはE2Fに対するユビキチンリガーゼとして機能していることが示唆された。以上の結果からEbiは(1)PcGの機能調節、(2)転写コリプレッサーとしての機能、(3)ユビキチンリガーゼとしての機能、という多様な作用様式でG1期の進行を制御していることが明らかになった。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Development 135
ページ: 1355-1364