ギリシアの後期中新世(約1000万年前)の化石類人猿であるウラノピテクスとアフリカの後期中新世化石類人猿との比較検討を進めた。その結果、両者のあいだに見られる類似点と相違点がかなり明らかになった。研究はまだ進行中であるが、中新世後期のユーラシアとアフリカの化石類人猿の形態的相互比較は、両大陸間における類人猿の移住過程や、ヒトとアフリカ大型類人猿の共通祖先の起源についての我々の知識を大きく増進させるものである。研究結果の一部は、平成19年3月8日・9日に岡山理科大学において開催された国際シンポジウム「Material Science and History of Earth and Sister Planets」において発表した。 東南アジアにおいては、タイ王国出土の中新世大型類人猿化石の比較研究を進めるとともに、チェンマイ大学大学院生と共同でタイ東北部の後期中新世の大型類人猿化石と同じ産地から発見された哺乳類化石の解析を進めている。この他、東南アジアの第四紀類人猿化石の研究もおこなっている。ベトナム北部には石灰岩地帯が広がっており、そこに形成された洞窟の堆積物からこれまでに多くの更新世〜完新世の動物化石が知られている。今回、研究代表者の國松は、ベトナム考古学院において、同学院所蔵のオランウータンやテナガザルの化石の調査をおこなった。これらはベトナム北部の更新世化石産地数ヶ所から採集されたものであるが、更新世のオランウータンには、サイズや形態の上で非常に大きな変異が見られた。
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