最近、西ユーラシアやアフリカから興味深い報告が相次いだ。そのため、現在、後期中新世のアフリカとユーラシアにまたがるホミノイドの関係が、両大陸間の哺乳動物相の交流と絡んで、ホットな話題として注目されている。このような状況のもと、本年度は、西ユーラシアに関しては、特にイランについて調査を進めた。イランは従来ホミノイド化石が発見されてきたアフロ・アラビア、西ユーラシア、東ユーラシアをむすぶ地域でありながら、これまでホミノイドに関しては知識の空白地帯である。しかし、冒頭にあげた新たな後期中新世ホミノイドたちは、いわゆるピケルミ動物相と密接に関係している。イランの後期中新世からはこのピケルミ動物相に属する化石が多数産出しており、アフロ・ユーラシアの化石ヒト上科の研究のためには、今後是非とも調査を進めていかなければいけない地域である。2008年5月にフィンランド、フランス、中国、日本の古生物学・地質学研究者らとともにイランを訪問し、イラン西北部の後期中新世化石産地であるマラゲ地域に関して調査をおこなった。この件に関して国内では林原自然科学研究所の渡部真人博士、鹿児島大学の仲谷英夫教授、島根大学の沢田順弘教授、酒井哲弥准教授らと研究協力を進めた。マラゲにおいては、約30年前に日本隊が発掘調査をした地域を訪れ、そこがいまだに多くの中新世哺乳類化石を産出する可能性をもつ事を確認できた。東ユーラシアに関しては、従来進めてきたタイの中期〜後期中新世ホミノイドに関する調査の一環として、タイ東北部の後期中新世ホミノイド産地から産出した偶蹄鯨目アントラコテリウム科の頭骨化石を、タイのチェンマイ大学大学院生とともに新種記載した。
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