研究概要 |
夜間の光曝露による様々な生体反応の関連性と個体差を明らかにするための実験を行った.インフォームドコンセントが得られた健康な成人男子大学生7名を対象に3夜連続で実験を行った.1日目と3日目の夜は,被験者の概日リズムの位相を調べるために,15ルクス程度の薄暗い光環境下で午前10時まで覚醒安静時の直腸温,唾液中メラトニン濃度,唾液中コルチゾル濃度の測定を行った.光曝露は2日目の夜に行った.昼光色蛍光灯による天井照明で,照度は1000ルクス(目の位置での鉛直面照度)とした.光曝露の開始時刻は,1日目の夜に測定した直腸温のデータを参考に,概日リズムの位相が後退する時刻とした.光の急性的な影響として,光曝露中の唾液中メラトニン濃度,脳波,心拍変動,直腸温,瞳孔面積,主観的眠気,作業能率を測定した.また,光の概日リズム位相への影響として,光曝露の前日と翌日の唾液中メラトニン濃度の変動から概日リズムの位相後退も定量化した.光曝露に伴うメラトニン分泌の抑制率や光による位相後退には個体差があることが確認された.しかし,両者の間に有意な相関は認められず,光によるメラトニン抑制と位相後退の問には関連が無いことが示唆された.現在は光曝露による脳波,心拍変動,直腸温,瞳孔面積,作業能率への影響の個体差を分析しており,光感受性の個体差と交替制勤務への適応能の関係についても検討している.また,光に対する生体反応の個体差と生活習慣要因(日常の光曝露履歴や睡眠習慣)の関係についても解析中である.
|