本研究は遺伝暗号に焦点を当て、アミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)によるtRNAのアミノアシル化の進化過程で、遺伝暗号がどのように成立して来たのかを明らかにすることを目的としている。遺伝暗号は20億年以上前に成立し、現生物界の大きな3つの種である古細菌、真正細菌、真核生物にわたって共有されている。しかしながらまだ解明されていない本質的な問題点がある。それは、地球上に生命が誕生して、どのようにしてこの遺伝暗号が成立してきたのか?という問題である。これこそ、生命の誕生における最大の謎であると言っても過言ではない。本研究では、通常の遺伝暗号に先立ったと考えられるOperationalRNACodeとして典型的な、tRNA^<A1a>のG-Uというウォブル塩基対の起源について、および、遺伝子発現を制御する「リボスイッチ」のうち、特に、最小のアミノ酸であるGlyを認識するリボスイッチに焦点を当て、遺伝暗号の起源との関わりを調べている。 前者の立場からは、オリゴヌクレオチド中にG-Uウォブル塩基対を有するようにデザインした実験系を用いて、G-UとAlaとの相互作用の解析しており、その特異性を生み出す構造基盤の解明を目指している。特に、アミノアシル化したtRNAを用いて、従来、検出できなかった特異的な相互作用形態を検出に取り組んでいる。また、後者の立場からは、Glyを認識するリボスイッチのGly認識のための最小要素の探索を行い、その詳細を明らかにしつつある。いずれも次年度につながる実験の基盤が確立しており、今後の展開が期待される。
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