研究概要 |
アブラナ属(Brassica)作物は、小胞子(未熟花粉)に32-33℃の温度処理を1-4日間行うことで、個々の小胞子から効率的に不定胚発生を誘導し完全な植物体を形成させることができる。この現象は形成した植物が半数体あるいは倍加半数体であるため育種手法として高い利用価値を持つと同時に、植物の発生・分化の基本的理解という面からも重要なモデル系となる。本研究は、この小胞子から不定胚形成への転換機構を理解するために、関連遺伝子の同定と機能解析を行うものである。得られた成果は以下の通りである。 すでに単離している小胞子胚発生誘導初期に発現している遺伝子群の中から、LRR-RLKsをコードする遺伝子についてシロイヌナズナの相同遺伝子を利用した機能解析を行った。その結果、GASSHOと命名した本遺伝子は胚特異的に発現する遺伝子であり、クチクラ等の表皮形成を制御している遺伝子であることを明らかにした。また、小胞子由来の球状胚特異的に発現する遺伝子の単離をSSH法により試み、110の独立したESTsを単離し、相同性検索によりそれらの機能推定を行った。 B.rapa, B.oleracea, B.napus, Arabidipsis thalianaのEST情報からデザインした約500個のプライマーセットを用い、B.rapaでは(A)油糧ナタネ自殖系統(イエローサルソン:小胞子培養難)とコマツナ葯培養系統(P11:小胞子培養易)の組合せ、B.oleraceaでは(B)カイラン自殖系統(B479:難)とブロッコリー葯培養系統(B31-18:易)の組合せでSCAR分析等を行い、(A)及び(B)において100個以上の両親に多型を検出するDNAマーカーを得た。現在両者を交雑したF1を作成済みであり、次年度以降F2個体を展開し、上記作成したマーカーによりラフマッピングおよび小胞子培養との連鎖解析を進める。
|