研究概要 |
コセナCMSナタネにB.rapaを交配し、その後ナタネで戻し交配を行ったところ、後代で稔性を回復した個体(Fr)が観察された.Fr個体は,稔性回復遺伝子orf687をもたず,Fr個体を父親としてCMSに交配した後代では,稔性回復個体と不稔個体が分離した.また,同一個体で不稔と可稔の花が見られる部分不稔の個体も観察された. orf125をプローブとしたサザンハイブリダイゼーションを行ったところ,Fr個体においてorf125のコピー数の著しい減少が観察された.そのFr個体を父親としてCMSに交配したF_1個体でも,orf125のコピー数の減少が観察された.このorf125のコピー数の減少は稔性とは関連せず,雄性不稔を示す個体においてもorf125のコピー数の減少が観察された. 次に,CMSナタネではミトコンドリアにorf125が座乗しているミトコンドリアDNAのサークル(orf125サークル)とマスターサークルが存在しており,orf125サークルのコピー数のみが核遺伝子Frの働きにより減少しているとの仮説をたて,ナタネの全ミトコンドリアゲノムをプローブとして,サザンハイブリダイゼーションを行ったところ,orf125のコピー数が著しく減少している,あるいは半分程度に減少しているが個体とCMSナタネの間で,検出された主要な68本のDNA断片は同一であった.すなわち,orf125のコピー数の変動にかかわらず,ミトコンドリアDNAのハイブリダイゼーションパターンに違いがなかった.このことから,orf125サークルがCMSナタネのマスターサークルとは独立に存在しており,orf125サークルはorf125を除いてマスターサークルのDNA配列と同一であるか,あるいは少なくともマスターサークルのDNA配列の一部とorf125から構成されていると考えられる.
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