ダイズと極めて近縁なVigna属植物をダイズのマップベースドクローニングのツールおよび新規遺伝子供給源として利用するための第一歩としてVigna属植物間の比較連鎖地図の作成を目的に、これまでにアズキ(V.angularis)、ケツルアズキ(V.mungo)の連鎖地図を作成したが、本年度は3種目にあたるツルアズキ(V.umbellata)の連鎖地図を構築した。ツルアズキ栽培種(ミャンマー産)とその祖先野生種(タイ産)とのBC1F1集団を用いて、185個のSSRおよび103個のAFLPマーカーからなる全長813.6cMの連鎖地図を構築した。共通のSSRマーカーの分布をもとに本連鎖地図とアズキ連鎖地図を比較した結果、両地図では一部の連鎖群の末端付近で逆位が認められた以外は、各連鎖群のマーカー順序は完全に一致しており、両種のゲノム構造は高度に保存されていることを明らかにした。連鎖地図を利用して栽培化関連形質のQTL解析を行ったところ、ツルアズキの栽培化には、第2、4および第7連鎖群の効果の大きい1〜2個のQTLが関係していた。アズキの栽培化関連QTLと比較すると、ツルアズキでは少数の突然変異が栽培化に寄与し、それらは種子や莢などの器官に大きな形態的変化を与えることを明らかにした。次にダイズとVigna属作物間の比較連鎖地図の構築を目的に、ダイズのEST-SSRマーカー4000種類についてVigna属連鎖地図作成を進めている栽培種および野生種のPCR増幅に関するスクリーニングを行ったところ、742種類が増幅可能であった。これらについては平成20年度にVigna属作物4種の栽培-野生種間の遺伝的多型を調査し、連鎖地図への集積を開始する。また、平成19年度に雑種集団を展開する計画のリョクトウに関しては、祖先野生種とのFl雑種に栽培種リョクトウを花粉親とした戻し交配を行い、BC1F1集団が育成可能な十分量のBC1F1種子を得た。
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