平成18年度は研究代表者が育成した稲QTLマッピング集団である"アキヒカリ×IRAT109"組換え近交系(106系統)を東京大学、宮城大学および石川県立大学で圃場栽培(延べ6作期を設ける)し、各系統の出穂日を調査したが、平成19年度には、これらのデータに基づき、DVR法によってそれぞれの系統ごとに発育予測モデルを構築した。発育予測モデルでは、発育の進行をDVS(発育ステージ)なる仮想的な連続変量の変化と仮定し、出芽時をDVS=0、開花時をDVS=1と定義し、DVSの変化速度をDVR(発育速度)と規定する。DVRと温度や日長などの要因との関係を関数化し、作期移動試験などの出芽後開花までの日数(開花日数)のデータを用いてパラメータを決定すれば、気象の経過から開花日数を予測するモデルが完成する。今回は、温度感受性、日長感応性、最適環境条件下の最小開花日数をそれぞれパラメータα、β、Gとするベータ関数で記述し、最小限のパラメータ数で開花日数を合理的に説明可能なモデルを構築した。つづいて、"アキヒカリ×IRAT109"組換え近交系の各系統についてパラメータα、β、Gを決定することにより、各系統の温度感受性、日長感応性、最適環境条件下の最小開花日数を評価した。これらの結果および、平成18年度に新たに構築した"アキヒカリ×IRAT109"組換え近交系の新たな遺伝地図に基づき、温度感受性、日長感応性、最適環境条件下の最小開花日数のそれぞれを制御する量的形質遺伝子座を遺伝地図上にマッピングすることができた。
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