研究概要 |
生殖成長期のイネの同位体分別比(Δ:N源δ15N-植物δ15N)は硝酸区の2.5mM区で2.6〜4‰,0.5mM区で0.02〜0.12‰であり,アンモニア0.5mM区で2‰,2.5mM区で-1.7〜-2.1‰であった。アンモニア2.5mM区では負の分別比を示したが,これは植物体からのN流出によるものと推定される。器官間におけるδ15N値の変動幅は,アンモニア区よりも硝酸区で大きく,開花期よりも成熟期で大きかった。アンモニア区の変動幅は2‰以内であった。これは他の報告と同様であり,アンモニア同化が根に局在しているためと考えられる。水ストレスによりアンモニア区で変動幅がやや拡大したが,硝酸区では縮小した。これは活発な硝酸還元作用が器官間のδ15N変動幅の拡大をもたらすことを示唆している。各区を通じて高いδ15N値を示す器官は穂,止葉,葉などであったが,根が茎葉部と比較して常に低い傾向を示すとは限らず,とくに開花期硝酸2.5mM区では有意な差は認められなかった。いっぽう稈基部では処理にかかわらず常に低いδ15N値を示した。これは稈基部がN代謝・転流において特異的な役割を果たしているためと推察された。
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