研究概要 |
本年度は,まずアイスプラントの塩蓄積能を左右する液胞の機能を明確にするために,塩及び乾燥処理した葉身から液胞膜を単離し,二次元電気泳動法によって液胞膜タンパク質を解析した.その結果,100mM NaCl処理した葉身では液胞膜ATPaseサブユニットaとbが,400mM NaCl処理した葉身ではエチレン応答タンパク質やシスタチオンγ合成酵素等のストレスタンパク質の発現が認められた.また乾燥処理した葉身ではストレス応答タンパク質であるカルシウム依存性タンパク質キナーゼが発現していた.いずれの処理葉身においても機能未知タンパク質をいくつか単離することができた. ついで,体表面に形成される塩の貯蔵器官であるブラッダー細胞の形成に関わる遺伝子を単離するために,ブラッダー細胞をもたない突然変異体を用いてサプレッションサブトラクティブハイブリダイゼーション法によって遺伝子の単離を試みた.その結果,野生株に特異的に発現する遺伝子として18個のcDNA断片が,逆に変異株に特異的に発現する遺伝子として21個のcDNA断片が得られた.塩基配列を決定して相同性検索を行なったところ,17個は機能未知の遺伝子であることが明らかになった. これらの遺伝子の解析には遺伝子導入技術が必要となるため,形質転換法の確立を試みた.予備試験的に行なった外植体からの個体再分化や外来遺伝子導入の結果を踏まえ,さらに諸条件を精査した.その結果,ウレア系サイトカイニンを用いて,子葉節にアグロバクテリウムを介して遺伝子を導入すると,効率的な遺伝子導入が可能であることを明確にした.この成果を取りまとめ論文として公表した(Sunagawa et al., 2007). このように今年度はほぼ計画通りに研究を遂行することができた.
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