研究概要 |
これまでの研究から、富栄養化水を培養液として用いる栽培システムにより、水中のSS(懸濁物質)を大幅に除去可能であることが判明した。さらに、エンサイ等の野菜は、水中のイオン状態の肥料成分だけでなく、水路内に自重で沈積し根圏に捕捉されたSSからも養分を一部吸収することが分かってきた。SSは主に土壌粒子やプランクトンの死骸などから構成され、湖沼の富栄養化にも密接に関わっており、これを栽培に有効利用し、さらに系外に除去すれば浄化にも貢献できる。そこで,栽培中にSSをより積極的に捕捉し、回収したSSを培地化して特に水温が低下する冬季に栽培に用いるという、周年的な野菜生産システムの開発を目的に研究した。 本年度は、水路に引き込む富栄養化水の流量を変え、流速の違いによるSSの挙動とエンサイの収量との関係を詳細に調査した。また、SSの培地化を試みた。湖沼の底泥も同様に供試した。SSおよび底泥の化学的特性を分析・評価し、造粒加工や籾殻くん炭との混合により物理性の改善を図った。コマツナを用いて栽培試験を行い、生育速度や養分欠乏症の有無から、SSや底泥を培地として利用する可能性を検討した。その結果、今後、他資材との混合による物理性の改善や、堆積発酵による有機物の無機化、さらに潅水頻度の検討等、培地として利用するために多くの改善を必要とすることが明らかになった。 最終的には本研究の結果得られた成果は,我が国だけにとどまらず広くアジア地域、また世界各地にも応用可能な汎用的な技術になると思われる。
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