研究課題/領域番号 |
18380020
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 和弘 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (60242161)
|
研究分担者 |
一ノ瀬 友博 慶應義塾大学, 環境情報学部, 准教授 (90316042)
高橋 俊守 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (20396815)
|
キーワード | 都市 / 樹林地 / パッチ状生息地 / マトリクス / 鳥類 / 都市化傾度 / マルチレベルモデル |
研究概要 |
調査対象地域について、マトリクスの状況を把握するのに必要な地理情報の収集Σ地理情報データベースの構築を進めた。マトリクスの状況は都市部においては樹林地の外側数kmの範囲までは概ね一定であることが明らかになった。このことは、パッチ状生息地の周囲に異なる幅の領域を設定してマトリクスの状態を検討しても、その際の最大幅がせいぜい数kmであるなら、比較される複数のマトリクスの間には本質的な違いが存在しないことを意味する(Katoh & Takahashi,2009)。 鳥類相を地点間で比較した結果、都市の樹林地における鳥類相の変化のパターンは概ね一次元的であることが示された。これは、都市化傾度に沿った鳥類相の変化とみなすことができるが、樹林地周辺のマトリクスにおける都市化の進行の他に、樹林地における植生の階層構造の単純化によっても概ね同じ方向性を持った鳥類相の変化が起こるものと考えられた。この知見を踏まえ、都市緑地の環境評価に応用可能な鳥類相評価指数を提案した。鳥類種を都市適応種(都市利用種を含む)と都市忌避種に分け、前者に2倍の重みを加えて重み付け種数を算出するものである。先行研究で示された鳥類相のデータにこの指数を適用した結果、鳥類にとっての生息環境を適切に評価できるものと判断された(加藤、2009)。 研究期間を通じて得られたデータを分析した結果、樹林地内の鳥類相は樹林地を取り巻くマトリクスの状況に影響を受けることが強く示唆された。-連のデータは、地域-樹林地-樹林地内の調査区、という階層構造をもっているため、近年発達してきたマルチレベルモデル(階層線型モデル)の適用を試みたところ、鳥類の種多様性は別途調査された蝶の種多様性と比較して局所的な植生構造や樹林地タイプによる影響の程度が弱く、一方で周辺環境による影響はより強く受ける傾向があることが示された。
|