広島県果樹試験場鉢植え'サザンイエロー'を用いて開花期に人工授粉を行い、(1)連続加温、(2)開花後0~4週間加温(0-4W)、(3)開花後0~2週間加温(0-2W)、(4)開花後4~8週間加温(4-8W)、(5)無加温の処理を行い、種子形成と温度との関係を調査した。その結果、無加温および4-8W加温処理では種子発育がみられず、いずれもAタイプ種子であった。これに対し、連続加温、0-4W加温、0-2W加温処理区ではAタイプ種子の発育がみられ、いずれも果実当たり10個程度の完全種子が認められた。開花後0~4週間の無加温における日平均遭遇時間は、28℃以上で1.5時間であったが、加温による日平均遭遇時間7時間であり、無加温に比べて顕著に長かった。一方、開花後4~8週間の無加温と加温における日平均遭遇時間は、28℃以上で5.3時間および5.9時間であり、無加温と加温による差は認められず、加温においては開花後0~4週間よりやや短い程度であった。また、'中間母本農5号'鉢植えをファイトトロンに搬入し、28℃、1日6時間遭遇処理および30℃、1日6時間遭遇処理を行ったが、いずれもほぼすべての果実が落果して、種子形成を調査することができなかった。これらのことから、無核紀州型の無核性発現は、開花後0~4週間の高温により胚の発育停止機構が解除され、胚や種子が発育することが明らかとなった。一方、'サザンイエロー'交雑後代の約350個体のうち、結実した85個体の果実調査を行った結果、不受精による無核の可能性がある個体を除く54個体で有核、無核の判別ができ、それらの分離比は1:1に適合した。無核性連鎖マーカーを開発するため、これらの個体について96プライマーを用いて多型解析を行った結果、組み換え価は14%ととなり、従来のFsマーカーよりも強く連鎖するマーカーは開発できなかった。
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