研究概要 |
ヒヤシンスの球根形成誘導は低温あるいはABAであることはすでに明らかにしている.シロイヌナズナにおいては,タンパク質リン酸化酵素であるCIPK3が低温誘導性遺伝子とABA誘導性遺伝子に発現をともに調節しているCIPK3遺伝子の単離,発現をヒヤシンスで試みた.低温により発現量は増加したが,ABA処理では明確な差はなく,今後さらに分析を進める予定である. 一方,ヒヤシンスおよびカノコユリにおける形質転換系の確立を目指して,葉原基や球根からだけではなく,培養シュートや子球からの植物体再生方法の実験に着手した. Allium schoenoprasumにおける球根形成および休眠性に関与する遺伝子の探索を目的として,同種内の変種関係にあたるアサツキおよびチャイブ間での交配で得られたF_1にアサツキを戻し交配した実生について,圃場栽培をおこない,以下の調査を行った.まず,戻し交配実生では,夏場に地上部が枯れ明瞭な球根形成がみられるもの(アサツキ型),地上部が枯れず明瞭な球根形成がみられないもの(チャイブ型),球根形成が見られるものの夏場に地上部が枯れないもの(中間型)の3型に分離した.また,チャイブ型と中間型では,連続した変異を示すため明瞭に区別は出来なかった. 次に,上記のアサツキ型集団と球根比が小さいチャイブ型集団間でバルク法によるRAPD分析を行ったところ,チャイブ型集団に特異的にみられるマーカー(CMN-B29)を検出した.そこで,このマーカーについて個体レベルで分析したところ,アサツキ型実生では7実生中1実生,チャイブ型集団では7実生中すべての実生で確認され,連鎖マーカーである可能性が示唆された.今後,このマーカーをもとにクロモゾームウォーキングにより球根形成および休眠に関与する遺伝子の探索を進める予定である.
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