研究概要 |
(1) 珠心胚実生を用いた幼樹開花条件と非幼樹開花条件の確立 : 4ヶ月齢のグレープフルーツ珠心胚実生を各種温度条件下で生育させた結果、15℃, 20℃および10℃(8時間)/20℃(16時間)で幼樹開花が起きた。また、1ヶ月毎に播種したグレープフルーツ珠心胚実生を10℃以下にさがらないように設定した温室で生育させた結果, 8月播種の実生が最も高い幼樹開花率を示した。1年生実生は9月に基部に2-3葉を残して切り戻し、腋芽を7-8葉展開させ、野外で冬期の低温に遭遇させることによって2年目の春にも連続して幼樹開花させることができた。以上のことから、11月播種の数ヶ月齢実生では展葉数が6葉以上で昼/夜温が20/10℃が幼樹開花条件(25℃では非幼樹開花条件)、9月切り戻し1年生実生では新梢葉数が6葉以上で冬期の自然外条が幼樹開花条件(25℃では非幼樹開花条件)であることが分かった。 (2) 幼樹開花性に関連する候補遺伝子群の探索 : 11月播種の数ヶ月齢実生を幼樹開花条件と非幼樹開花条件下で、秋季切り戻し1年生実生を幼樹開花条件と非幼樹開花条件下でそれぞれ生育させ、翌年1月にカンキツ実生の茎頂と葉を供試し, 全mRNAを抽出し、逆転写酵素でDNAとした後、多数のランダムプライマーを用いてPCRを行った。ディファレンシャルディスプレイされる候補遺伝子断片は非常に多数あり、しかも発現が不安定なものが非常に多く見られた。このため、幼樹開花実生に特異的なDNA候補断片は見出せなかった。 (3) 幼樹開花性と雄性不稔性の遺伝解析 : 雑種実生群について幼樹開花実生と雄性不稔実生の分離を調査した。幼樹開花性は劣性ホモで発現すると推察されたが、実生の生育状況に影響される形質であったために正確な遺伝様式は決定できなかった。幼樹開花性関連遺伝子をヘテロに持つ多数のカンキツ品種群を確認した。イヨカン、クレメンティン、河内晩柑、スダチが細胞質稔性回復因子を持つこと、多数のカンキツ品種が雄性不稔核遺伝子に関してヘテロであることが明らかとなった。 (4) 雄性不稔性に関するDNAマーカーの探索 : HY16xグレープフルーツの交配から得た幼樹開花(雄性不稔と雄性稔性)実生を供試して, DNAマーカーを探索した。その結果、雄性不稔遺伝子が座乗するグレープフルーツの相同染色体のそれぞれで連鎖地図を作出した。
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