研究概要 |
(A) ウイロイド感染により宿主植物に誘導されるRNAサイレンシングと病原性の関係 引き続き、ウイロイド感染植物のカルコン合成酵素(CHS)遺伝子の発現量の解析を行った。昨年度の結果から、特に、tchs2の発現量が最も顕著で、発病との関連性が高かったので、フラボノイド生合成経路でchs遺伝子の下流にあるchi, f3h及びfls遺伝子を分離・クローニングし, プローブを作成した。PsTVdをトマトに感染させ, tchs2及びchi, f3h, fls遺伝子発現量をノザンプロット法で経時的に解析した。その結果, いずれの遺伝子も, 発病前の接種7日目では健全葉と感染葉で発現量に差はなかったが, 病徴(葉巻)発現(14日目)に伴い, 発病葉での発現量が減少し, tchs2では健全に比べ約65〜90%も減少した. ウイロイド感染によりCHSを含めたフラボノイド生合成経路が影響を受けることが, 病徴発現と関連する可能性が示唆された. ウイロイド感染植物に生じるsrPSTVdの茎と葉の分布及びサイズと極性(プラス/マイナス)を解析した。茎では葉より高濃度のsrPSTVdが蓄積していた。また、茎・葉共に、プラス鎖由来のsrPSTVdには約21塩基と24塩基の2種類が、マイナス鎖には約21塩基の1種類が存在していた。24塩基のsrPSTVdは従来の手法ではクロサニング効率が極めて悪く、末端に何らかの修飾がある可能性が考えられた。 (B) 自律複製能を生み出す分子構造のバイオインフォマティクス解析と実験的検証 遺伝的アルゴリズムを応用して新しいRNA共通二次構造予測プログラムを開発し、ベンチマークテストにより従来手法と比べて高効率に低配列類似度におけるRNA共通二次構造予測を行えることを示した。RNAの部分的配列類似性を基に、様々な変異を有するウイロイドRNAの2次構造予測が可能になった。
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