研究課題
本研究課題は、植物パラレトロウイルスの持つ翻訳トランスアクティベーター(TAV)によるポリシストロニック翻訳機構を解析し、これらウイルスの宿主決定機構の核心を明らかにするとともに、得られた知見を応用して植物における新たなポリシストロニソク遺伝子発現系を構築することを目的とした。昨年度、植物葉への遣伝子銃による遺伝子導入と、ホタルルシフェラーゼ(Fluc)とウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)の発光検出によるデュアルルシフェラーゼアッセイによってさまざまな植物種での翻訳トランスアクティベーター活性検定の系を確立した。その系を用いてダイズやインゲンに感染する植物パラレトロウイルスであるダイズ退緑斑紋ウイルス(SbCMV)のORF6産物(P6)が翻訳トランスアクティベーターであることを証明し、SbCMVの宿主特異性を担っていることを示唆された。今年度は、同様のTAV活性検定の系を用いてシロイヌナズナやカブに感染する植物パラレトロウイルスであるカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)についてもP6が宿主特異性を担っているか検証を行った。その結果、CaMVのP6は、宿主植物であるシロイヌナズナやカブでは高いTAV活性を示したが、非宿主植物であるインゲンでもTAV活性を有することが確認された。また、TAV活性に関与する宿主因子候補として数種リボソームタンパク質がP6と相互作用することが示唆されているが、本研究で、酵母two hybrid法でSbCMVP6と相互作用したインゲンのリボソームタンパク質のシロイヌナズナのホモログはCaMVP6と相互作用しなかった。過去の報告では、CaMVでは宿主特異性はP6が担う可能性が示唆されている。また最近、P6にサイレンシングサプレッサー活性があることが示された。したがってそのため、CaMVでは宿主特異性はP6のTAV活性以外の機能が宿主特異性に関与する可能性が示唆され、ポリシストロニック遺伝子発現系の構築にはさらなる解析が必要であることが示された。
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Archives of Virology 153(9)
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