研究概要 |
平成20年度においては、hrp遺伝子に依存しない植物病原細菌のうちPantoea ananatisについて主に解析した。既に昨年度の結果より、メロン果実内腐敗細菌病を引き起こすP. ananatisは特異的に植物ホルモン合成遺伝子iaaM,iaaH,etzを有していることを明らかにしたが、メロンより分離されるP. ananatisのうちこれらの遺伝子を保有しない菌株はメロンに対する病原性が無いことを明らかにした。また、メロンハウス飛来昆虫やメロン花器より分離されたP. ananatisについても同様にこれらの遺伝子を保有する株のみが病原性を示すことを明らかにし、これらの遺伝子がメロンへの病徴発現において必須であることを示すとともに、本病原細菌の伝染様式を解明し、さらに特異的な検出手段としてこれらの遺伝子をターゲットとしたPCR法が使える事を示した。一方、イネやネギに病原性を示すP. ananatisはこれらの遺伝子を保有せず、タバコに過敏感反応様の壊死を誘導する。この壊死誘導条件を調べたところ、注入3時間後以降に抗生物質により細菌を死滅させても反応は起こるが、シクロヘキシミドによってタバコのde novoタンパク合成を押さえると反応が生じない事を明らかにし、典型的なHR反応と極めて類似している事を明らかにした。しかしながらPCRやハイブリダイゼーションによるhrp遺伝子の検出は全て陰性であり、このイネ病原性群が従来に無いHR誘導機構を備えている事が示された。次年度ではこの菌株を中心にその遺伝的なメカニズムの解明を行う予定である。さらに、ニンジンのこぶ病菌Rhizobacter dauciが数種雑草から分離同定された。本菌もHR誘導等は示さず、あらたなタイプの病原性発現機構を有する事が示唆された。本菌の病原性発現機構についての解析も行う予定である。
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