研究課題
平成21年度においては、昨年に引き続きhrp遺伝子に依存しない植物病原細菌のうちPantoea ananatisについて主に解析した。昨年度までの成果より、イネやネギに病原性を示すP.ananatisは、植物ホルモン合成遺伝子を保有せず、タバコに過敏感反応様の壊死を誘導することを明らかにした。この壊死誘導条件を調べたところ、典型的なHR反応と類似しているが反応誘導のための誘導期間が4時間以上と長く、さらに壊死の発現まで36~48時間かかること、HRの指標とされるタバコのhin1, hsr203J両遺伝子は発現しているが、やはり典型的なHRと比べ3~6時間遅延することを明らかにし、新たな因子による反応である可能性を示した。P.ananatisにトランスポゾンの導入を試みたが、自殺ベクターが自殺せずに維持されたり他の導入キットの組み込み効率が極めて低い事が明らかになった。しかし、数百個の変異株を得て、それらのIIR様反応の誘導能を調査中であり、新たな病原因子あるいは分泌関連機構の解析への道筋が得られた。さらに、ニンジンこぶ病菌Rhizobacter dauciが培養中に死滅しやすい原因が菌体からの3ヒドロキシ酪酸の放出にあり、そこを調節すると同菌がシスト様の形態をとって乾燥への耐久性が高まる事を明らかにした。このようなシスト様の形態は植物病原細菌では初めてであり、同菌の生存と感染といった生態の中で重要な役割を果たしていることが明らかとなるなど、研究計画立案時では想定していなかった大きな成果が得られた。
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Journal of General Plant Pathology 76
ページ: DOI 10.1007/s10327-010-0230-9