研究概要 |
本研究の平成18年度の課題として、まず、フラジェリン分子中における過敏感反応誘導に必要なドメインを、大腸菌を用いた組換えペプチド生産システムを用いて生産させ、それらを用いて過敏感反応の誘導試験を行うことにより、解析した。また、アラジェリンの過敏感反応誘導能に及ぼす糖鎖修飾の影響を解析した。Pseudomonas syringae pv.tabaciと、P.s.pv.glycineaのフラジェリンはともに同一のアミノ酸配列を有するが、それらのフラジェリンは植物種により過敏感反応誘導能が異なるをめ、各菌株についてフラジェリンの糖転移酵素遺伝子(fgt1,fgt2,以前はorf1,orf2としていた)を両pathovarsで入れ換えた変異株を作出した。そうして、それぞれの入れ換え株に由来するフラジェリンの各種植物に対する過敏感反応誘導能を調べるとともに、入れ換え株をそれぞれの宿主・非宿主植物に接種した時の植物の応答を解折した。前半の試験では、大腸菌で生産させた組換えペプチドは糖鎖修飾されていないため、フラジェリンのアミノ酸配列の過敏感反応誘導能の解析が可能である。そこで、全長のフラジェリン遺伝子を、フラジェリンタンパク質のアミノ(N)末端側、中央部(M)、カルボキシ(C)末端側に分割し、全長(NMC)の他、MC、M、NCの各ドメインを有するペプチドを生産し、非宿主シロイヌナズナに対する防御応答能を解析した。その結果、既報のMAMPであるflg22を含むアミノ末端側のドメインを有するペプチドは過敏感反応誘導能を保持していた。また、この応答はflg22に対する受容体FLS2を有するシロイヌナズナに限定してぉり、フラジェリンの認識におけるflg22とFLS2の重要性が示された。後半のfgt1,fgt2入れ換え変異株については、pv.tabaci,pv.glycineaの双方で作出したが、それぞれの菌株の表現型、ならびに入れ換え株に由来するフラジェリンの宿主・非宿主に対する過敏感反応誘導能については現在解析中である。
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