研究概要 |
Pseudomonas syringae pv. tabaciとpv. glycineaのフラジェリン糖鎖を調べたところ、pv. tabaciでは構成糖のラムノースが全てL型であるのに対し、pv. glycineaではL-ラムノースに加えて、D-ラムノースも混在していることが判明した。次に、昨年度作出したフラジェリンの糖転移酵素遺伝子(fgt1, fgt2)をpv. tabaciとpv. glycineaで入れ替えた菌株についてフラジェリンを精製し、フラジェリン糖鎖中のラムノースのキラリティについて解析を行った。その結果、pv. tabaciのfgt1,fgt2に入れ替たpv.glycineaにおいてもD-ラムノースが存在していたため、fgt1,fgt2がラムノースのキラリティを決定する糖転移酵素遺伝子ではないと考えられた。また、フラジェリンのS201の糖鎖の構造を決定することに成功し、セリンからラムノース新規なビオサミン誘導体を含む3糖から構成されることが判明した。これは植物病原細菌において始めて明らかにされた糖タンパク質糖鎖である。また、糖鎖の欠損したフラジェリンを有する変異株では、べん毛の形態に異常をきたし、束を形成して泳動能力が低下していることが判明した。一方、フラジェリン処理により発現が誘導されるシロイヌナズナ遺伝子としてWRKY41が同定され、WRKY41の発現がエフェクターにより抑制されること、WRKY41高発現シロイヌナズナでは半活物寄生性植物病原細菌であるP. syringae pv. tomatoに対する抵抗性が増高するものの、殺生性病原細菌であるErwinia carotovora subsp. carotovoraに対する感受性が高まることを見出した。
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