研究概要 |
前年度までの研究でフラジェリンの糖鎖の一部はラムノースと修飾ビオサミンから構成されることが判明した。また、pv.tabaciのフラジェリン糖鎖中のラムノースは殆どがL体であるのに対して、pv.glycineaではL体に加え、D体が混在していることが判明した(Taguchi et a1.2007)。これらの情報からL-ラムノース,D-ラムノース,修飾ビオサミンの転移に必要なdTDP-L-ラムノース、GDP-D-ラムノース、dTDP-修飾ビオサミンの合成に必要な酵素と推定棟転移酵素遺伝子を近縁のP.syringaeのゲノム情報から推測した。さらにdTDP-修飾ビオサミンの合成遺伝子の欠損株とその遺伝子の近傍に存在していた推定の修飾ビオサミン転移酵素遺伝子について、pv.tabaci、pv.glycineaで欠損株を作出した。その結果、それら変異株のフラジェリンには、MALDI TOF-MS解析により修飾ビオサミンが存在しないことが判明した。また、これらの変異株病原性が低下したことから、これらの遺伝子が病原性に必要であることが判明した。さらに、フラジェリン分子のflg22を含むN末端側に過敏感反応誘導に必要な領域が存在することが判明したが(Naito et aL.2007)、N末端の合成ペプチドD43は強い過敏感反応の誘導に必須のアミノ酸であることが明らかとなった。一方で、pv.tabaciのD43V,D43A変異株の病原性は著しく低下し、過敏感反応に重要なD43は病原性にも重要なアミノ酸であることが判明した。以上のことから植物は病原性の維持に必須のアミノ酸を含む配列をMAMPとして認識していることが明らかとなった。これは植物の高度なMAMP認識機構の一端であると考えられた。
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