本研究課題は、殺虫スピードの異なる核多角体病ウイルス(NPV)をチャノコカクモンハマキ幼虫に接種し、その病理学的性状を比較し、殺虫スピードを決定する要因を明らかにすることを目的としている。具体的には、チャノコカクモンハマキNPV(AdhoNPV)つくば株、Autographa californica MNPV(AcMNPV)、AdhoNPV宮崎株、Adoxophyes oranaNPV(AdorNPV)オランダ株等を比較対象として用いる。 供試するウイルスを増殖しウイルス包埋体を精製して、チャノコカクモンハマキ幼虫に接種して殺虫スピードを調査した。その結果、ウイルス感染致死時間は、AcMNPV、AdorNPVオランダ株、AdhoNPVつくば株および宮崎株の順で長かった。また、オランダ株のDNAについて制限酵素断片長を解析した結果、2種以上の遺伝子型が混在しており、さらにin vivo isolationを行った結果、致死スピードの速い遺伝子型と遅い遺伝子型があることがわかった。一方、ウイルスの遺伝子型により致死スピードが異なることから、チャノコカクモンハマキ野外個体群から新たな遺伝子型の探索を試みた。H18年に京都府ではチャノコカクモンハマキが大発生したため幼虫を採集し採集個体からウイルス病の探索を試みたが、8月に採集した個体群からはNPV罹病虫は見つからなかった。 致死スピードのもっとも遅いAdhoNPV宮崎株について、その同定を行った。電子頗微鏡による観察とウイルスDNAおよび包埋体タンパク質の解析を行った結果、このウイルスは、NPVよりも顆粒病ウイルスに近い性質を持っていることがわかった。また、チャノコカクモンハマキの初代培養細胞の樹立を行った。
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