研究課題
本研究課題は、核多角体病ウイルスの殺虫スピードを決定する要因を解明することを目的としている。イギリスから分離されたリンゴコカクモンハマキNPV(AdorNPV)は、つくばで分離されたチャノコカクモンハマキNPV(AdhoNPV)よりも殺虫スピードが速く、さらにそのゲノム構成はAdhoNPVに極めて近縁であった。また、AdorNPVのゲノムをAdhoNPVと比較すると、Ecdysteroid UDP-glucosyltransferase(EGT)の遺伝子の機能ドメインが欠損が見らることが、別の研究グループにより報告された。殺虫スピードとegt遺伝子との関連を調べるためには、組み換えウイルスを作製して検証することが必要であるので、前年度に引き続きin vivoで組み換えウイルスを作製する法について検討した。まず、幼虫にDNAを注射接種することにより感染するかどうか調査した結果、核酸導入試薬を用いることによりAdhoNPVのDNAを4齢のチャノコカクモンハマキに注射して感染虫を得ることに成功した。また、宮崎県で分離されたウイルス株については、全ゲノム塩基配列の決定を行った。その結果、99,504塩基の宮崎株全長の解読に成功した。宮崎株は、119個の推定ORFを持ち、このすべての推定ORFが、リンゴコカクモンハマキ顆粒病ウイルス(AdorGV)のホモログであった。宮崎株は、AdorGVに較べて包埋体の形状が著しく異なっている。宮崎株とAdorGVの推定ORFのアミノ酸配列の一致度を比較すると、119個中60個の推定ORFが100%一致し、さらに、112個のORFが95%以上一致した。最も一致度の低かったのは、odv-e25(55%), ORF109(67%), 38.7kd(84%)などであった。これらのORFについても、in vivo組み換えウイルス作製により、どの遺伝子の変異が包埋体の形状異常に関与するのか明らかにすることができる。
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Virologica Sinica
Biological Control 46
ページ: 542-546
http://www.tuat.ac.jp/~insect