研究概要 |
研究計画に従い、カイコ幼虫血液に含まれる顆粒細胞増殖因子について、(1)血液からの増殖因子の精製と決定、および(2)他の昆虫種で明らかにされている翅成虫原基の細胞増殖因子の遺伝情報に基づいた決定、の両面から検討をおこなった。カイコの品は、増殖因子採取用には、錦秋x鐘和、増殖活性試験には、日106x大造を用いた。 まず、(1)については、インスリンと幼虫血液をMGM450培地に加えることにより、カイコ4齢幼虫の血球のうち、顆粒細胞のみで増殖促進が見られることを確認した後、血液中に含まれると推察される顆粒細胞増殖因子の性状を調べた。その結果、80℃以上の熱処理で活性の低下が見られ始める比較的熱に不安定な高分子物質であることが示されたことから、タンパク質またはポリペプチドであると推察された。また、幼虫の発育経過と活性の関係を調べたところ、5齢2日目に最大となり、血液採取にはこの時期の幼虫が適していることが判明した。また、この研究の過程で、顆粒細胞の培養条件と生物検定法について確立した。増殖促進因子の精製は、常法に従い、硫酸アンモニウム処理による活性画分を得、希釈倍率等を調べた後、HPLCによる分画をおこない、活性画分についてはぼ特定した。 次に、(2)の翅成虫原基の細胞増殖因子(IDGF)の遺伝情報からの検討では、機能は全く未解明であるが、すでにカイコでショウジョウバエのIDGFに相同な塩基配列が明らかにされているため(BMIDGF,BAB16695)、この情報を基にプライマーを設計し、カイコ幼虫より調整したcDNAを用いてPCRで増幅、発現ベクターに組み込むまでの一連の操作を完了した。
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