研究概要 |
1)エクジソン応答遺伝子を同定するため、エクジソン(20-hydroxyecdysone,20E)により発現を誘導した脳サブトラクションライブラリーから、20E誘導遺伝子を10単離した。20Eに対する応答性を逆転写-PCRで確認し、in situハイブリダイゼーションによる発現部位の特定を行ったところ、ほとんどの遺伝子が前胸腺刺激ホルモン(PTTH)産生細胞でのみ発現を有することを示した。 2)カイコ16,000遺伝子を搭載したDNAマイクロアレイを利用し、20E応答遺伝子の網羅的解析を行った。5齢2日幼虫に20Eを投与し人工的に20E応答遺伝子を誘導し網羅的解析および5齢8日幼虫脳での発現遺伝子の網羅的解析の結果、20Eにより直接、発現量が2倍以上変化した80遺伝子を特定した。これら遺伝子のうち、5齢8日幼虫脳での結果とと相関する遺伝子数はわずか11であった。この11遺伝子及び20Eにより発現量が大きく変化した遺伝子に的を絞り、in situ hybridizationによる発現部位の特定を行ったところ、大部分がPTTH産生細胞特異的な発現を示した。 3)20E応答遺伝子の一つであるEcR遺伝子を標的遺伝子とし、カイコでのRNA干渉実験の系を整えた。5齢0日幼虫に5μgのdsRNAを投与し2日後に脳を回収した。EcR遺伝子の発現量を検証し、RNAi効果を検証したところ発現レベルが、80%以上低下していたことから、本実験系においてRNA干渉が効率よく機能していることが示された。RNAi処理個体の幼虫期における致死率は約70%であり、生存個体は幼虫期間が3-5日間短縮されていた。
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