研究概要 |
本研究課題において、カイコとクワ間の相互関係をタンパク質レベルで明らかにすることを主眼としている。これまで、クワウレアーゼとスルフォトランスフェラーゼ様タンパク質が選択的にカイコ幼虫体内に取り込まれることを明らかにした。当該年度では、これら2種類のクワ由来酵素について研究を進展させた。 1. ウレアーゼ遺伝子及びそのアクセサリータンパク質遺伝子の解析:ウレアーゼの活性発現には、アクセサリータンパク質(UreD, UreF, UreG)が必須である。そこで、クワから既知の高等植物のUreD, UreF, UreGに相同性を有する遺伝子をそれぞれ単離し、これら遺伝子情報をDDBJよりAB479109, AB47108, AB47107として登録した。その推定アミノ酸配列からは、高等植物UreDの特徴である細菌類のUreDとUreEが融合した配列構成も認められた。単離された3種類の遺伝子はRT-PCRによる発現解析によりウレアーゼ活性が認められるクワの葉,根において等しく発現が確認できた。クワ葉を食下したカイコ体内でもウレアーゼ活性が検出されることから、ウレアーゼとアクセサリータンパク質は複合体を形成した状態で微絨毛表皮細胞から体内に取り込まれるものと予想される。 2. スルフォトランスフェラーゼ様タンパク質の解析:クワ葉に含まれるフラボノール類がカイコ体内に取り込まれることが知られていることから、当該酵素の基質としてフラボノールを取り上げた。体液を採取し、リン酸化フラボノール類をHPLCで分離することを試みたが、明確な結論が得られなかった。フラボノール類は非水溶性であり、体内でリン酸化や配糖化される必要があり、今後の課題である。
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