研究概要 |
昆虫の概日振動系、その光受容、および神経伝達にかかわると考えられる遺伝子をいくつかのモデル昆虫を用いて、クローニングし、それらを発現し、または合成ペプチドを抗原として抗体を作成して、脳内のニューロンマップを作った。新たにクローニングしたものは、カブラハバチのCycle (Benbenek et al. 2007,J.Insect Physiol)、マダラスズSWオプシン、クリプトクローム、アレスチン1,2、ワモンゴキブリのメラトニン受容体、ナミハダニのGABA受容体である。マダラスズでは、PER,カゼインキナーゼI, II, NAT, CYCLE, CLOCK,休眠ホルモン、コラゾニン、CCAPの詳細なマップを作成した(Shao et al.2006,J.Biol.Rhythms, Sehadova et al. 2006 Cell Tiss.Res.)。これらの抗原の共存パターンを解析した。また、抗体が得られていないものについては、カイコでin situ Hybridization)による解析をおこなった(Trang et al.,2006,J.Biol.Rhythms)。これらの、マッピングの結果、概日時計は分散系であり、この関連する抗原は脳の中に広範な分布を示した。また、概日振動系の可塑性と多様性が、クローズアップされた。特に、近緑のコオロギ2種間で、これらのエレメントの分布の様相がかなり大きく異なり、これまで、直翅目の時計の座と考えられてきた、視葉のほかに食道下神経節の優位な種と、視葉優位な種が存在することが分かった。また、インドールアミン代謝系が時計遺伝子を発現する細胞にあるか、隣接して存在することから、出力系として、インドールアミン系が時計の制御に重要なかかわりを持っていることが明らかになった。光受容の観点からも、食道下神経節や、前大脳に網膜外受容があることが示唆された。
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