(1)ワモンゴキブリの脳で概日時計のタンパク質の局土が調べられた。PERIODやDBTは視葉のdista1側だけではなく、前大脳の脊側方と脳間部(PI)にも観察された。そこでPIを切除すると、術後全暗条件においた時にだけ、走行リズムが消失したが、明暗条件においた揚合にはリズムは正常に見られた。この時ゴキブリは大量の餌をとり、肥満したゴキブリになった。脳を正申切断すると明暗周期下でも肥満がおこった。術後全暗においた時には、リズムは無くなったがhyperactivityは観察されなかった。このことはPIにも光に依存した時計に関連する制御機能が存在することを示している。PIを除去すると摂食活動が増進し、中腸内でアミラーゼやプロテアーゼの分泌浩性が増進する。また、この時、アラトスタチンとCCAPの分泌細胞の数が増える。PIは摂食とリズムの形成に重要な申枢を擁しているということになる。(2)サクサンでセロトニン受容体を2種類クローニングした。5HTR-Bの転写活性は概日変動した。マダラスズでは5HTR-Bが概日タンパク質のCLKと共存した。(3)コオロギで睡眠のパターンを観察した。コオロギは独特の睡眠姿勢を示した。コオロギの睡眠には脱皮に先立つものと、脱皮間期にみられる2種類の睡眠があることがわかった。(4)ナミハダニ及びマダラスズのNAT活性に及ぼす、アクション・スペクトラムを決めた。その結果、後者では青色光が、ナミハダニでは青色光とUV光が高い感受性を示した。後者ではUVB光がNAT活性を抑制するように働くが、線量がさらに増加すると今度はNAT活性は増加する.この反応は、UVB光による活性酸素の害をメラトニン合成で回避する作用ではないかと考えられる。(5)マダラスズとカイコでオプシン遺伝子をコードするcDNAをグローニングした。マダラスズではNATの活性を抑える青色光を吸収するBlue wave opsinの転写活性にZT8をピークにしたリズムが見られた。LW opsinの方は網膜外では振動しなかったが、網膜では明瞭なピークが見られた。興味深いことはLW opsin様免疫組織化学反応は幼虫のときと成虫で大きく異なっていた。幼虫のときには食道下神経節に強い反応があらわれたが成虫では、前大脳に強い反応が見られた。本年度は光の入力系に焦点をあててオプシン類の探索を進めた。得られた配列によるin situ hybridizatioや免疫組織化学的な探索から、複眼以外の網膜外光受容体が広範に分布し、種や、発生段階でも異なっていることがわかった。
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