(1)カイコ培養細胞の培養条件に対する反応パスウェイに関わる遺伝子発現の網羅的解析 カイコBmN4細胞において培地の違いで発現量が2倍以上異なる383遺伝子を既知のパスウェイ上にマッピングする作業は、年度内に完了できず、継続して行うことが必要となった。また、新規農薬ピリダリルの数種チョウ目昆虫培養細胞への影響を調べた結果、ヤガ科由来の培養細胞のタンパク質合成を抑制するものの、BmN4細胞には毒性を示さないことが判明したので、人畜無害で選択性の高い農薬開発のターゲットの一つとして、ピリダリル標的分子を選定した。 (2)各種カイコ培養細胞株に特有な代謝パスウェイに関わる遺伝子発現の網羅的解析 カイコ体液によるKe1細胞のバキュロウイルスBmNPV感受性増進の主要因が、他のカイコ培養細胞とは異なり、promoting proteinでない可能性が強く示唆された。そのため、網羅的解析以前に、まず、体液中のウイルス感染促進因子の分離同定が必要と判断された。 (3)遺伝子発現ネットワークの検出及び検証に必要なアッセイ系の構築 piggyBacベクターによる形質転換カイコ培養細胞におけるヘルパープラスミド残存問題を解決するために、ヘルパープラスミド中に存在するpiggyBacの3'ITR配列の除去及びトランスポゼースmRNAの代用を検討したところ、ヘルパープラスミド由来のトランスポゼースmRNAが代用mRNAよりも長期間検出され、mRNAによるトランスポゼース供給が有効と判断された。また、人為的突然変異アセチルコリンエステラーゼ遺伝子をpiggyBacベクターで発現する農薬検定系を構築し、理論的考察から設計された新規昆虫特異的殺虫剤に対して1アミノ酸置換で抵抗性になることを証明した。
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